展覧会の詳細

世界を魅了した「青」
浮世絵名品展

―春信・歌麿の“露草青”写楽の“藍”北斎・広重の“ベルリンブルー”―
平成27年4月11日(土)~平成27年5月31日(日)

《神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)》は葛飾北斎(かつしか ほくさい)の傑作「冨嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい)」シリーズの一つとして広く知られます。とくに波を彩る濃く鮮やかな「青」が人々を強く印象づけています。このたび、浮世絵の青色絵具に焦点をあてた展覧会を開催します。
浮世絵は江戸時代初期(17世紀)に墨摺絵(すみずりえ)から始まり、18世紀半ば頃より多色摺へ変化を遂げました。様々な色彩の中でも「青」の発色は難しく、試行錯誤が重ねられました。まず鈴木春信(すずき はるのぶ)などの美人画に使われたのが露草青(つゆくさあお)でした。彩色時は美麗ですが植物染料のため退色しやすく水に滲(にじ)みやすいものでした。やがて東洲斎写楽(とうしゅうさい しゃらく)などの役者絵に藍(あい)が多く用いられるようになりました。藍は退色しませんが水に溶けず、濃い青から淡い青へと変化させる表現が困難でした。
その後登場したのがベルリンブルー(通称ベロ)でした。ベロは1704年にドイツで生まれた合成顔料で、日本へは18世紀後半に長崎へもたらされました。伊藤若冲や平賀源内の絵画作品の一部に、ベロ彩色の先行例が近年明らかになっていますが、最も効果的に活用されたのが北斎の「冨嶽三十六景」(文政12年(1829)より刊行)でした。ベロは変色せず水によく分散するため、鮮明な色を保ちつつ、青の濃淡で遠近感をもたらす表現が自由にできるようになり、浮世絵のさらなる隆盛へとつながっていきました。
本展は、東京・礫川(こいしかわ)浮世絵美術館所蔵の名品100余点により、浮世絵師たちが理想的な絵具を求めながら、多様かつ繊細な「青」の色彩表現を究めた足跡をたどります。

入 館 料 一般・大学生1,000円 小・中・高校生500円
※毎週土曜日・5月5日(火・祝)小中学生無料
※15名以上の団体は各2割引
開館時間 10:00~17:00(入館の受付は16:30まで)
休 館 日 木曜休館
主  催 佐野美術館、三島市、三島市教育委員会、静岡新聞社・静岡放送 /礫川浮世絵美術館
後  援 静岡県教育委員会
協  賛 伊豆箱根鉄道株式会社
企画協力 アートシステム