展覧会の詳細

正恒、吉房、光忠―天下の名工、ここにあり

備前刀剣王国

平成27年11月29日(日)~平成28年1月24日(日)

備前国(岡山県)にはいずれ劣らぬ名工が名を連ね、鍛造された刀剣の質・量ともに他国を圧倒します。
同地は古代より鉄の産地として知られ、12世紀に日本刀独特の形が完成してからの約400年間には、友成(ともなり)、正恒(まさつね)、吉房(よしふさ)、光忠(みつただ)、長光(ながみつ)、兼光(かねみつ)、祐定(すけさだ)らが活躍し、古備前物・一文字(いちもんじ)派・長船(おさふね)派という大きな流派が誕生しました。彼らは源平合戦、蒙古襲来、南北朝の動乱といった日本の政変と呼応して、各時代の刀剣の潮流を生み出し、更に主要流派に属さない元重(もとしげ)、長義(ながよし/ちょうぎ)といった名工や「小反(こぞ)り物」と呼ばれる一群の活躍は備前刀工の層の厚さを物語っています。
本展では日本を代表する名刀を中心に、輝かしい備前刀剣王国の400年をご覧いただきます。

入 館 料 一般・大学生1,000円 小・中・高校生500円
※毎週土曜日小中学生無料
※15名以上の団体は各2割引
開館時間 10:00~17:00(入館の受付は16:30まで)
休 館 日 木曜日、12月25日(金)~1月4日(月)
主  催 佐野美術館、文化庁、三島市、三島市教育委員会
後  援 静岡県教育委員会
協  賛 伊豆箱根鉄道株式会社

展示会構成

第一章 古備前物 ―平安時代後期~鎌倉時代前期(十二~十三世紀)

鎬造(しのぎづくり)、弯刀(わんとう)の日本刀様式が確立した平安時代後期、その頃を活躍期とする刀工に友成・正恒がいる。両者は古備前物の双璧である。
当時の備前には、数多くの刀工がおり、一つの流派系統としてくくることができないために「古備前物」と呼び習わしている。その作風は、友成のように優美な太刀姿に風雅な刃文、正恒のように洗練された地鉄(じがね)に形の整った刃文など、多様である。そして、この古備前物によって「備前刀剣王国」の礎が築かれた。

第二章 一文字派 ―鎌倉時代(十三世紀)

鎌倉時代は、日本刀の黄金期であり、それを牽引(けんいん)したのが備前一文字派である。
鎌倉時代は、日本刀の黄金期であり、その代表格が備前一文字派である。
一文字派は、茎(なかご)に符丁のような「一」の字を刻したことから呼ばれる。その発端は、後鳥羽院が院内に則宗(のりむね)を招聘(しょうへい)し鍛刀させたことで、則宗の一門を古一文字と呼んでいる。その後、吉房・助真(すけざね)・則房(のりふさ)などの名工を輩出され、彼らを福岡一文字と称している。
一門の創始者・則宗の作風は、気品のある反りの姿、精緻な地鉄に幽かな映り、可憐な小丁子文が特徴である。以後、一門は丁子文を多様に発展させた。そして、身幅の広い太刀に絢爛豪華な丁子文を競い、刀剣王国の名を世に轟ろかせた。

第三章 長船派 ―鎌倉時代(十三~十四世紀)

長船派は光忠から始まり、その子の長光、孫の景光を上三代と呼んでいる。
鎌倉時代中期、蒙古襲来という国難に、長船派は大工房を構えて需要急増に応えた。
創始者・光忠の作風は、身幅が広めの豪壮な姿に、頭の丸い蛙子(かわずこ)丁子文を華麗に焼き、物打ちは焼きを押さえ、一文字とは異なった作風を生む。長光はそれを踏襲するが、焼幅を押さえた作は用に重きを置いた工房作と考えられている。景光(かげみつ)は、身幅を押さえ、地鉄は精良で、刃文は新たに片落ち互の目(ぐのめ)の様式を打ち出した。この三代にわたる名工によって長船派の基盤は揺るぎないものとなり、刀剣王国の名は不動のもととなった。

第四章 長船派 ―南北朝時代(十四世紀)

南北朝時代の長船派を牽引するのは、四代目兼光である。兼光は、二分された朝廷のもとにあって、北朝方にあり、伝来の大工房の惣領として全国的に名を馳せ、後継者として倫光(ともみつ)・基光(もとみつ)・政光(まさみつ)らを育て、また多くの職人を抱えていた。一方、長船には兼光とは別派である元重・長義などの名工も存在している。
兼光の作風は、一メートルを超える長大な太刀、かつてない広い身幅に大鋒(おおきっさき)、刃文には鎌倉時代後期に一世を風靡した正宗の刃文を取り入れた。これを相伝備前と呼んでいる。時代の新風を取り入れながら、時代をリードする逞しさは、長船派の魅力である。

第五章 小反り物 ―南北朝時代後期~室町時代前期(十四世紀)

いつごろからか、小反り物と呼ばれる一群の刀工がいた。長船嫡流兼光、傍系の元重・長義などに属さない刀工たちを一くくりにして呼んでいる。
年紀には南北朝時代後期から室町時代前期までがある。
作風は、小のたれに互の目など多種な刃文を交え、総じて小模様となり、個々の特色は見出し難い。しかし、小反り物も、大きな長船の流れの支流と考えられ、長船の層の厚さを物語っている。

第六章 長船派 ―室町時代(十五~十六世紀)

南北朝を合一した足利義満は、平安・鎌倉時代の文化への強い憧憬をもち、いち早くその風潮を取り入れた長船一門を応永備前と呼んでいる。作風はやや小造りながら、バランスのよい太刀に小綺麗な刃文を焼いた。代表的刀工に盛光(もりみつ)・康光(やすみつ)らがいる。
嘉吉の乱・応仁の乱で守護大名が疲弊する中、下克上の風潮と新たな武器鉄砲の伝来によって、戦闘方法が変革され、太刀に代わり打刀が主流となっていく。鍛冶屋千軒といわれた長船村で勇躍したのが祐定一門であり、蟹の爪と呼ばれる個性的な刃文を焼いた。十二世紀後期から四百年間隆盛をきわめた刀剣王国は、十六世紀末、戦国時代とともに終焉(しゅうえん)を迎えた。

同時展示

常設展示室第四期/面は語る―能面と物語

能面が表現する物語の世界を6点の作品で紹介します。

【出品作品】
深井 出目友閑満庸作 江戸時代前期
山姥 桃山時代
般若 江戸時代中期
猩々 出目元休満永(古元休)作 江戸時代前期
邯鄲男 河内大掾家重作 江戸時代前期
大飛出 桃山時代